第44節: 甲府 0-1 福岡

試合が終わって、選手達が近づいてくる。勝ったときも負けたときも、はるかアウエーの地に聳える国体用陸上競技場、トラックを跨いでグレイのユニフォームを着た選手らが近寄ってくるその瞬間が好きだ。興奮を隠せず高揚した顔で額を上げる奴。へこむ内容でも平然としてる奴。不甲斐ない出来に見事にしょぼくれた顔してる奴。負けたときこそ勝気な表情を見せる奴。選手個々の性格がちらりと垣間見える気がする。

とくにこの時期、福岡のユニフォームを着るこの選手の姿を見るのは最後だな・・・と思いながら傾いた日のなかでのそれは、見たくないけど見てみたい、なんとも言いがたいものなのだ。

布部が、いつもより10歩近寄りファンに声をかけ、タッチをしながらスタンド際を歩いてくる姿を見て、「ああ、そうなんだ・・・・」と悟った。俺も手を伸ばす。ずっとヒドイなかでも特別にヒドいここ3年の福岡にそれでも布部がいてくれたこと。構成する線が全部直線のような、絵に描いたように誠実な布部。あの神戸戦で、今でも思い出す度に身震いするゴールを決めた布部。そんな布部が福岡を去ることになったのだ・・・・。軽く握手したときに、「布部、ありがとう」と思わず声が出る。こっちを見てうなずいた布部の目は、ちょっとびっくりするくらい茶色がかった透明だった。

「とうちゃん、あのフクオカの人と握手できてよかったね」とまめ太さん。

「あの選手は、お別れを言いに来たんだ」と俺。

試合は、まあなんというか守備はちゃんとしてた。ラインはそれなりに高いが、ラインを守ることはあまり重視してなくていざというとき早めにブレイクして、カバーに回る。3ヶ月で守備はここまで来たということか。

攻撃は全然だな。フリーランがないからサイドで必ずどん詰まる。惇なんて、周りの選手が走ってなんぼの選手だろうに。

今やJ2堂々の中位~下位チームなのだ。目の前のセコい勝ち点よりも、まずはいいサッカーを志向することから始めたらどうか。

行き帰りはまめ太さんのカネの話と下ネタに引いた。まめ太さんよ、虹を見ろ。