2023シーズン アビちゃん離陸したか論と、久々の博多の森雑感

長いこと低迷するアビスパを見ていて、こりゃそう簡単には上向かんなとみなさん感じてたことでしょう。個人的には、永遠のどん底クラブが万が一上向くことがあるとすればそれは飛行機の「離陸」みたいなもんになると思ってた。ドタドタ地面を這いずってたアビスパが地道に諸々の手順踏み準備積んだうえで、とうとう宙に浮いた日にはそれが傍目にもわかる、華やかな何かがあるんだろうな、と夢想してた。

今まで「離陸したかも!」と思ったのは2015年の昇格のときで、当時の仲間は割と自信ありげに「もう落ちんと思うよ」と言い切ってたし、自分でも今度はそんなに酷いことにはならんだろうと期待してたけど、全然甘かった。

今考えると、クラブも経験が全然足りなかったし、プレーオフ経由になって椅子取りゲームみたいな移籍市場で致命的に出遅れた。そもそも予算が全然足りてなかった。

クラブがまともになったところでそんなのは前提でしかなくて、チームの強化はそこからなのだ。

その後2019年の謎の大低迷(監督選びをしくったというのもあるけど、今調べたらこの年だけ選手人件費が露骨に少ない。やっぱ予算はウソつかない)を経て、2020年秋のどうかしたような連勝もありようやく昇格。J1に三年居続けて、それまで勝てなかったチームに勝つようにもなったけど、それでもそれなりに図体のデカいアビスパが離陸した感覚はなかった。

それまでと違う風が吹き始めたのは今年の9月、チームが爆発的に強くなっていってるのを感じた。
気づいたらクラブはまだまだとはいえそれなりの財政規模に達しつつあり、若くて優秀な人がクラブに集まるようになっていた。スポーツ面では20代半ばの有望な選手を獲れて、監督・コーチも面白い陣容が揃った。相変わらず観客動員はJ1最下位だけど、それでも昨年よりは試合あたり2000人規模で増えてて、なんだか色んな人がスタンドに集まり、何よりほとんど全員が高いチケット代を払って来ているのは今までにないこと。
J1中位のチーム相手ならばバチバチにやり合った上で勝てるようになり、そしてとうとう「傍目にもわかる、華やかな何か」が起きる日が来た。

もしかして離陸した?

という、ようやく訪れた感触が正しかったかどうかは、その後明らかになった2023シーズンの好成績を経てなお、歴史の審判ってやつを経ないとわからんところではある。この後どうなるかの保証はない、一瞬浮いただけかもしれんし、ちょっと飛べたとしても気を抜くと簡単に墜落する。

それでも、離陸したんじゃなかろうかという実感は確かにある。

広島戦は、2020年最終節以来久々の博多の森だった。負けたのは仕方ない、マリノス・広島・川崎といったスポーツ的に目標となるチーム相手に来年以降どう渡りあっていけるか楽しみになった。

気になったのは、ゴール裏をクラブの意図通り動かそう、巻き込もうとする動きが見えたこと。個人的な思いをぶっちゃければ、チアもジェット風船もクラブ主導のユルネバ(暗黒時代にやろうとしてたんです、もう誰もそのことを口にしないけど)もアビスパには合ってない(チアは一生懸命やってくれてるのはわかるし、味方だと思ってるし、男性チアがいたのは面白い試みなので敢えて足を引っ張るようなことは一切書いてなかったけど、それでも残念だけど福岡のゴール裏には合ってない。申し訳ないけどそう思うので書いておく)。
サポーター団体であったり、もしかしたら後援会などといった、クラブが直接統御できない外部組織は今のクラブにとっては邪魔な変数でありリスクでしかないのかな、と思うと先行きどうなるんだろうと心配ではある。完全な邪推だけど、いずれこのクラブにオーナーが現れるんだとしたら、その時のために出来るだけ変数項は減らしておきたいんだろう。福岡の文化を尊重して性急な動きをしてないだけクラブは誠実なんだよなと納得しつつ、これからもサポーター文化に手を突っ込むようなことはしてほしくない、官製応援で有名になった某クラブのムズムズするような居心地悪さを考えると、今のゆるい信頼を基礎に成立しているファンベースは絶対に維持してほしいと思う。サポーターを商品扱いしようとするならば嫌悪を覚えるし、排除や統制の対象だとも今のクラブには思ってほしくない。
今年も配偶者に来てもらったんだけど、クラブ職員には見えない連中がテキパキとビッグフラッグの準備をしているのを見て、「あの人たちは・・・ボランティア?」と聞いてきたのはなかなかふるってると思った。自発的にやっていることだからボランティアの一種には違いないけど、あの人たちはなにより「自分たち」のためにやっているのが一般的なボランティアとちょっと違う。
監督もコーチも選手も、株主もクラブ職員もいずれは去る。玉ねぎを剥いて剥いて剥いて最後に残るものは自分たちだとあの人たちも俺も思っている。そういうことだと思う。

試合後は、最近車の運転に目覚めた配偶者氏にゆっくりドライブしてもらおうと日田方面へ。途中、朝倉の奥の方の飯屋で水炊きを食べた。バカみたいに旨い一人前1500円という超絶価格の水炊き食って帰りしな、アビスパのことなんか絶対知らなそうな60くらいの女性店員の方に「東京からサッカー見に来たんです」と伝えると、「アビスパ?今日最終節やね、残念やったねー」と秒で返された。

アビスパ、多分離陸しましたわ。