わたくしには子供が二人いまして、小さい頃はスタジアムの非日常な雰囲気を味わっとくのも悪くないよねーと思い、アビスパの試合に連れて行ってました。関東や静岡方面がほとんどだけど、博多の森にも二度ほど行ったんじゃないかな。小さい子あるあるで、チャントを覚えて家や保育園であたり構わず歌ってました。
だけど意思とか情緒が子供なりについてくる時期になると、アビスパの試合に連れて行くのをやめた。
アビスパなんて関わったところで何もいいことがない。
不幸になるのはオレ一人で充分。
地元には潤沢な運営費で選手を買い漁れるクラブが地域に密着してるし、応援するならそっちにしたほうがいい。
当時はいわゆる暗黒期だったのです。
不幸の再生産をする必要はないな、と思ったんですな。実際、熱心にアビスパを応援する人は熱心であればあるほど、クラブのあまりのクソっぷりに
丈夫な人は幻滅し、
そうでない人は心身をすり減らし、
そして去っていくことがとても多かったのですよ。いや、チームが弱いなら弱いでそれは仕方ない。それよりも、応援する気を片端からへし折るクラブの数々の醜態は心身に堪えた。
今からしたら考えられないよね。
そんなダメクラブを俺はどうして懲りずに追っかけてたのか。
北海道や東北・北陸のスタジアムで、ヘッタクソなチームのためにほんの5人くらいでもドでかい声で歌う博多弁のイカれた人たち。一目見て、狂ってると思った。
こりゃどうかしてる・・・でも、こんなに少ないなら手助けせんと・・・と一緒に声を枯らした後の長い鉄路や狭苦しい高速バス。線路の音や低く唸るエンジン音のさらに底から、脳内をぐるぐると回り続ける。
フックッオカ!フックッオカ!
アビスパ福岡!どんどんどどどん アビスパ福岡!どんどんどどどん
これから! どど はじまる!どど おれーたちの歌で!
ぐるぐる、ぐるぐると回り続ける。
どうかしてる人たちと歌う、どうかしてる何ものか。学生の頃、合唱だの校歌だの国歌だの、集団で歌うということが大嫌いで一切従わなかったのに、一体何がどうしたんですかね。そのうち、ゴール裏には100人、1000人集まることだってあるのを知ったけど、5人だろうが10000人だろうが変わらない。声の束を選手に届けるということ。紺色のバンデーラを選手に見せるということ。そこに自分がいるということ。
どんなにクラブがダメでも、ゴール裏、というか あの歌は嫌いになれなかった。結局、そういうことだったと思うんです。
Jリーグ公式の舞台裏動画で、試合後に宮選手が口ずさんでたね。
「君が思うよりも・・・」って。
最高やん。最高。
声は届くんよ。
試合前から福岡のゴール裏はリラックスしてて、舞台の晴れやかさを存分に楽しんでた。どちらかというと硬かったのは浦和側だった。それがアビスパの選手たちを後押しした、絶対。
火薬の匂いがまだ漂うなか前寛之が先制点を叩き込み、機を見てぐっと押し込んだ時間帯に宮大樹が決めきった。3ラインは生き物のようにボールを掠め取りつづけ、永石拓海は機敏で頑丈だった。
声は届くんよ。
結果として子どもをアビスパに巻き込まなかったのはもったいなかったな、とは思うんだけどどうなんですかね。サッカークラブ追いかけるのにのめり込むなんて余計な波風要因でしかないよな、とも思ったり。
どうなんですかね。
ともあれ。
先週土曜日、アビスパは勝ちました。国立競技場。ルヴァンカップの決勝戦。
優勝したんです。