映画「監督失格」雑感

ネタバレあります。

先週水曜、夕方の回を見に行きました。

見て3日ほど寝ても醒めてもこの映画のことばっか考えてました。ようやく気持ちの整理がついたので、見たという事実と、ちょいと感じたことをものしておきたいと思います。

悔やまれることに、映画を観る習慣もAVを見る習慣もなかったもので、この人のいままでの仕事は全く見てません。もし知ってたら、この映画を見ての衝撃はもっと大きかったはず。

何がそんなにすごかったのか。それはつまるところ、幡ヶ谷で撮影されたあのシーンがあるから、でしょう。映画秘宝の方が「日本映画史に残るシーン」と言ったらしいですが、とにかくとんでもない緊迫感と無念さと焦燥とがスクリーンに叩きつけられているのです。客席に居るほぼ全員が息を飲んで画面に見入っているのがわかりました。

半ば事故的に撮ってしまったこのシーンですが、しかし、平野勝之という人の林由美香に対する執着を垣間見ると、彼がこのシーンを撮ったのは必然でもあったような気もします。

もう一つ、やはり平野が映画人として巧みであるから、でしょう。平野はこの映画で、ようやく林の(ママ言うところの)1つ目の死を納得するわけなのですが、俺はそれを完全に追体験してしまいました。

女の顔を叩いたり暴言吐いたりしてた平野に、しかし幡ヶ谷以降俺は完全に感情移入してしまったのです。その結果、平野の「納得」を俺は呑んだわけです。キーはやはりあの幡ヶ谷の映像です。「オクラ入り」していた映像を、ママと平野とその他関係者にとって大事な大事な映像を、平野はある意味冷徹に利用して、それに成功した。ということだと思います。

映画を見終わったあと、とにかく一人になりたかった。できれば家まで歩いて帰りたかったけど、次の日は外せない仕事があったので頑張って電車に乗りました。

この時代を生きる全ての人に見てほしい。