「アメリカン・ギャングスター」感想

DVDで見ました。

返却まで一週間あったので、通しで二度見てしまった。

二度見ても面白かった。

ただし、二度目はちょっとアラが見えるようになった。たとえば、クライマックス近くのガサ入れ->追跡シーンはムチャクチャ盛り上がるかと思いきや案外淡白。突入後の銃撃戦は目まぐるしすぎてわけがわからないがこれもどこかしらあっさりした印象を受けた。一癖も二癖もありそうな同僚たちは面構えだけで相当面白いのに、彼らの背景描写はほとんどない。そして何より、刑事(リッチー・ロバーツ)の 人物描写がなんだかよくわかるようなわからないようなものなのだ。

というのは、この男は職業人としては倫理のカタマリで、この揺るがなさが物語を成立させている大きな柱になっている。揺るがない男だからこそ組織内でワリを食い、揺るがない男だから悲惨な目に遭わずに済み、揺るがない男だから最終的には「アメリカン・ギャングスター(アメリカの悪党)」を追い詰める。が、俺にはその揺るがない倫理の拠り所がよくわからなくて、というのはこの男自体は全然倫理的じゃないのだ。私生活が破綻してるのももっともだ。プライベートは単なるダメな野郎なのだ。

本人はさほど倫理的ではない、職場環境は荒廃してる、それなのにいったいなんで奴は倫理的な警官であれたのか、説明はない。これは同僚の捜査員たちも同様だな。そこが納得できないので、奴は単なる変な人に見えなくもない。まあ変な人には変わりないけど、でもさー、もうちょっとなんか理由付けがあっていいんじゃないの。

とはいえ、そんなことは瑣末なことですよ! リッチーの真の狙いが明かされるシーンには、スレてない俺は思わず「はぁ~~」と感嘆の溜息をついてしまった。そして1991年のニューヨ ークには無茶苦茶パブリック・エナミーが似合う! 爆音で見ることをお勧めする。