映画「シークレット・サンシャイン」雑感

レンタルビデオ屋の新作棚ででタイトルが目に留まったので借りてみました、「シークレット・サンシャイン」。

宇多丸の年間ランキング1位だったのでなんとなくタイトルを覚えてたのだ。

前に見た韓国映画が"OLD BOY"だったものだから鮮烈な一撃を予想していたら、のっけから絵面は相当いなたい。画面に映るものなにもかもがヤボったい。韓国の田舎町が舞台だから、当たり前だけど全然洗練されてない。子供の髪が最高にカッコ悪い。想像上の産物であるところの、下品なオッサンそのまんまのオッサンたちがわっさわっさ現れて、そのまんま下品な会話を繰り広げてたりする。

つまり全然華がない映画で、始まって30分ほどは「間違えて別の映画を借りてしまったのでは・・・」と不安になったくらい。なんだけど、いつの間にかぐいぐい引き込まれてしまった。見終わったのが夜中の2時くらいだったんだが、終わって30分ほど部屋の明かりを消したままカミさんと感想戦を繰り広げたほど。

教会のシーンに代表される宗教的な高揚感と、世俗的な人間のいい意味でのダメさ加減の対比が本当に鮮やかに対比になってて、そういうシーンになるたびに俺は思わず笑ってしまった。要はソン・ガンホが最高に面白くて、たとえばチョン・ドヨンが焦げそうなくらいに焦りまくってるときに、この男、これまた焦げそうなくらいに熱くマイクを握って熱唱してたりする。しかも一人で。

で、聖なる何がしかと俗な何がしの落差というか差異の描写がこの映画のキモだと思うんだけど、その差異を担保してる一つが主演のチョン・ドヨンの演技で、この人は本当にすごい。なんなんだこの人は。

主人公はものすごい幅で揺れまくるし、安心と不安、幸と不幸、善と悪などの価値も裏返りまくるんだけど、ソン・ガンホの俗っぽさだけは微動だにしない。今日から「俗物」は褒め言葉だと思うことにしよう。