大草原の大きな暗黒

噛みあう話にはならんだろうなと、向き合う双方はもちろん、ノブリュウ・中倉さん・西日本新聞田中氏といった方々もハナっから思っていたであろう、先週金曜に開催された「カンファレンス」。

今のところ公式・非公式問わず議事録がない(あらかじめの脱力感から、誰も取る気がなかったと察する)から人伝に聞いたボンヤリしたことしかわからんが、まあ予想通りの雰囲気・議事進行だったようです。

なんで噛みあわないんだろうなあとか、なんでこのクラブの一切合財が人をここまで萎えさせるんだろうとか、都筑の野郎はなんで辞めねえんだとか、ビジョンを一緒に考えましょうとは一体何事だとか、なぜ公の場でああまでみっともなく逃げるのかなあとしばらく考えてみた。考えてるうちにそれが妄想に発展し、俺なりに物語が出来てしまったので以下ウスラボンヤリと記すことにする。

都筑氏は全く責任を取らない。男らしいくらいにキッパリと取らない。不思議なくらい自分の出来てなさ加減を認めない。ムカつくことこの上ないが、ではなぜ責任を取らないのか。それは、社長の座は是非守らないといけない大事な天下り先であったり、無敵のオトボケ体質に見られる個人の資質だったりも理由なんだろうけど、なによりある時期まで、そもそも責任とセットであるはずの権限がなかったからじゃないか。権限はないけど責任もないよ、という前提で就任したんじゃないかと思いついたのが以下の妄想の発端です。

都筑氏がアビスパ福岡の社長に就任したのは2006年5月。前任者は九電出身の熊倉氏。

就任までの半年の間にあった出来事を以下列挙してみる。

(1) 2005.11 J1昇格決定

(2) 2005.11 チーム統括グループ新設、グループ長は育成統括だった長谷川治久氏

(3) 2005.12 松田監督続投正式決定

(4) 2006.04 減資の実施

2005年終わりごろの、当時のクラブの意思決定や力関係がどうなっていたのかは俺は知らん。が、いくつかの伝え聞いたことによると、これらの項目のうち(2)と(3)はなかなかに微妙な話だったと思われる。

伝え聞いたこととは、まず、このころ当時のトップチーム監督だった松田氏と、管理強化部長中村氏は決定的に関係が悪化していたらしいと言うこと。

そして、長谷川氏を現場のトップに据えることは以前からの懸案であったということ。

更に、長谷川氏をチームに引っ張ってきたのは中村氏であるということ。

(念のためだが、証拠は皆無。この時点で既に妄想ではある。)

以上を踏まえ妄想開始。

中村氏は、役職上は松田氏をクビに出来る立場であった。だけど折り合いが悪かった松田氏をクビにできなかったのは、松田氏留任はトップの決断だったのだろうな。そういえば、このとき続投は前もって新聞報道されていたのだな。

監督人事で頭を押さえられた中村氏は、しかし現場の責任者として長谷川氏を据えることには成功する。

2008年の今からすると笑いを禁じえないこの人事はなぜ行われたか。

察するに、この手の人事は、まさしくかねてからの念願だったのではないか。

# 実は今回調べるまで俺は全く知らなかったんだが、長谷川氏って2005年の1月から、育成統括って立場でクラブにいたのだ。えー、ということは熊倉氏も別に知らない人間だったわけじゃないんじゃないか。あの男のどこを見込んで就任にゴーを出したんだ!?と今にして思うが、ひょっとしたら中村氏と松田氏の関係があまりに冷え込んでいたのを見ての采配だったのかも知れない。

「この手の人事」について説明する。

アビスパというクラブは、クラブ・チームにとっての重要な決断を「ド素人」が行っているのは皆さんご存知でしょう。このことについて、当時のフロントはそれなりに考えてたんだと思うのですよ。それはおそらく、プロのクラブなんだからすくなくとも現場はプロが仕切るべきだ。私らにはプロクラブの経営・運営について知識もなければ、人を呼ぶにも人脈がない。ド素人の社長や誰やらが迷いに迷った挙句珍妙な判断をする羽目にならん組織にしましょう。ということだったんだろう。

ちなみにそれまで「この手の人事」をしたくても出来なかったのは、カネがなかったからじゃないか、と聞いた。

なぜ中村氏がよりにもよって長谷川氏を呼びたいと考えたのかはわからない。わからないけど、案外「他に知らなかったから」というあたりが理由なんじゃなかろうか。

新しいポスト「チーム統括グループ」の新設と、適任者の就任。

これでクラブを支える大まかな構造はできた、と当時のトップは思ったでしょう。

まず、地元財界の有形無形のバックアップは今後も続く。そこからのお飾り・天下り社長を受け入れることで結びつきはより強固になる。

お飾り社長は基本的になにもする必要はない。なぜならクラブ運営はチーム統括グループが行うから。

2006年4月に予定している減資を実施すれば、財務体質も帳簿上は大幅に改善されることになる。

短期的なチーム運営については、少なくとも大外れじゃないことは周知の監督をチームの監督に続投させた。

チームの補強は思ったよりうまくいかなかったが、万一降格することがあっても大揺れにならないような組織を作れたんじゃないか・・・・

はあ、俺よくがんばったわ。きっと前社長はそう思って退任したことだろう。

この状況に、都筑興氏がどういう認識で社長に就任したか。これまた大妄想だけど

・基本的にチーム統括グループをバックアップすればよい。わしサッカーのことなんか何も知らんしね。

・権限はないけど、責任もないはずだし、三年間大過なく勤めないとな。大事な天下り先だし。

こんな感じだったんじゃないかと想像する。

そしてここから残念な話が続出するわけだが、都筑氏が社長就任以降に起こった出来事は以下の通り。

(5) 2006.05 松田氏監督解任

(6) 2006.06 川勝氏監督就任

(7) 2006.09 クラブ外から長谷川氏へ退任要求

(8) 2006.11 長谷川氏辞任

(9) 2006.12 J1 16位、入れ替え戦

(10) 2006.12 J2降格

(11) 2006.12 川勝氏辞任

(12) 2006.12 小林氏をチーム統括グループ長として招聘

(13) 2006.12 リトバルスキー氏を監督として招聘

クラブ内での数少ない後ろ盾だった前社長がいなくなり、チームの成績不振から松田氏のクラブ内での足場はきわめて弱くなった。

解任時の会見に出席したのは都筑氏と長谷川氏。

このときの都筑氏の思いを代弁するなら、「長谷川氏が言うなら・・・・」だったんじゃないか。少なくとも、右も左もわからないど素人のジイサンに、監督解任の是非を自分で判断できるわけがない。長谷川氏の言うことをそのまま受け入れたんだろう。

長谷川氏のあまりのド外れっぷりがその後の都筑氏にとっては全てなんでしょう。任せていいといわれていた人間にその通り任せていたら、なんだかメチャメチャなことになってしまったのだから。

余生を過ごす前の腰掛けだったはずが、千人単位の人間からの非難を浴びることになった衝撃は相当なもんだったことだろう。狼狽ぶりが想像できて笑える。

ただ、その後任せといたらダメなんだなと首尾よく辞任という形で長谷川氏を追い出した手腕だけは素直に大したもんだと思う。

以降、アビスパ福岡は素人が仕切る以前の姿に戻ることになる。「プロ」に懲りた都筑氏は自ら立つはずがなかった矢面に立つことになってしまった。

「タチの悪いプロ」が仕切っての腐臭とそれを踏まえての「どアマ」が仕切っての当然の惨状、最早どっちもどっちである。どっちがどうとか、疲れるから考えたくない。

そもそもは監督で呼ばれたはずの小林氏の処遇と、急転直下のチーム統括グループ長就任後なぜクラブ内で力を持ち得なかったのかはよくわからん。社長と折り合いが悪かったとか、そういうことなんじゃないですかね・・・・もしかしたら都筑氏はサッカー的な審美眼を持ち合わせていないことから、リトバルスキーという権威にとても弱かったのではないかな(小林氏とリトバルスキー氏が対立してたのは周知の通り。しかしこのクラブはこんなんばっかやな)。

正直、「こりゃ話が違う」とか「俺の手には負えん!」「失敗した・・・」と思ったことも多々あるだろうが「やってられん」「適任ではないので辞める」「責任取って辞める」等など、絶対言えない。天下り先を守るためにとにかく続けねばならないのだ。そしてここは戦中生まれのすごいところで、彼はわけもわからずムッチャクチャに叩かれまくった辛い任期をまっとうしつつあるし、きっとまっとうするだろう。

出来ないことをやる羽目になり、当然失敗こいて笑われるその姿は晒し者としか言いようがない。名前で検索したら最早罵詈讒謗しかヒットしないっすよ。俺も相当無茶苦茶書いた(一時「馬鹿 無能」で検索したら俺の書いた都筑関連エントリが2番目に表示されていたこともある。あれには笑った)。彼にはそれなりに問題があるのだけど、それでもこの妄想の中では問題点より立場の悪さの方が際立つ(ことにする)。まるでちんぷんかんぷんなのに、恐れ多くもビジョンの提示を求められたりなんて、針の筵以外のなにものでもなかろう。

以上、題して「被害者としての都筑興」。この妄想の中では、都筑氏は被害者に見えて・・・こないかな。

都筑氏についての一番ものがなしいエピソードは、リトバルスキー氏の去就が取り沙汰されていた折、関東のあるクラブ首脳に「だれか監督適任者はいないか」と本気で訊いて呆れられたという奴だ。まったくの素っ裸で、サッカークラブの社長を務めているということ。何が普通で何が普通じゃないかすら判断できないのに誰も助けてくれないということ。

大抵のことはニヒヒとイヤらしく笑える俺でも、これは笑えるようで笑えない。監督どこじゃない、人脈が無いから足がかりさえ掴めないのは社長・GMなどといったクラブの要職についても一緒なのでしょう。都筑氏はプロサッカークラブの実権のある社長にまるで向いてないけど、今彼が辞めてくれたところで、やってくるのは似たり寄ったりの約束された被害者だ。

なんというかクラブの内部に限って言うと、誰が悪いという話ではないのかもね、これ。長谷川氏しか知らなかった中村氏の人脈に頼るしかなかったのも切ない。それなりにプロクラブっぽい体裁を作ろうとした前社長の思惑も切ない。ちゃんとした組織を作ろうと意図したであろう、当時の主要株主・取締役会の思いも切ない。素っ裸で奮闘した都筑氏も勿論切ない。誰も悪意があってやったことではないんだと思うと、なんともやりきれない。

被害者は居ても加害者がいないという救いようがない話。こりゃどうしようもねえなオイ。どんだけ暗黒小説なんだよバカヤロ。

敢えて探せば、この人脈の枯渇っぷりの淵源は、西日本新聞連載に書かれていたことだが、その昔ブルックス人脈を切ったことにあるのかも知れないな。

ブルックスの呪い、ですか。