ヴァセリンズってやっぱアレですかねアレの意味ですかね

飲みながらずいぶん前に買った辺見庸の本をめくってたら、ある死刑囚についての一節にいきなりニルヴァーナのことが書いてあって思わず居住まいを正した。どんなジジイだよバカヤロと思わず口にしながらも一気に目が覚める。あのおっかない顔した硬骨だがロクデナシのオッサンと、ヒデエ世界とヒデエ自分を表現しきった男達の組み合わせだ。思わず正座してしまったりして。

「あのな、俺に嘘つくんじゃないよ。おまえ、夕べ、どこで寝てたんだ?」

「松林で、陽なんかささない松林で、俺は一晩中震えているだろう・・・」

一人で飲んでたら、どこからかそんな声が聞こえてきたんだという。そうだ、そういえばそんな変な曲があったなあ・・・とかなり酷い反応の俺。聴いた当時はなんか嫌な曲だな、くらいにしか思ってなかった。こんなん歌われたら、そりゃコートニーだって嫌な気分にもなるだろう・・・

それはともかく辺見もニルヴァーナも、奇怪な穴を掘る蟹だ。居心地は悪い穴だけど、不思議に惹きこまれる。



さて、天皇杯もコロリと負けましたか。

コバさんが来たくらいではやっぱり福岡はよくなんなくて、まあそれは腐った土台の上に一本くらいまともな柱を立てたところで全体がどうにかなるもんでもないので当たり前のことだ。

俺が福岡に最初に興味を持ったのは、チームもサポーターも ものの見事にヒールだったからだ。目先のことでいっぱいいっぱいになりベテランに大金(しかも税金)をつぎ込むアホなフロント、いろいろあってリーグには疎まれ、他のチームのサポーターには基本的に馬鹿にされる。なんなんだこのチーム、と思ってるうちにそんなチームがある事実がだんだん嬉しくなってきてしまい、しまいには興味があるを通り越して好きになってしまった。

それから大して時間も過ぎてないけれど、福岡を巡る環境は結構変わった(他のチームはもっともっと変わったけど)。

チームは相変わらず弱い。弱い期間が長すぎてリーグに睨まれることがなくなってしまった。単なる雑魚化が進行している。

サポーターは大人しくなったなあ。禍々しい、ヒリヒリするような雰囲気は最近めっきりなくなった。俺もスタンドに紛れ込んだらいっちょまえに「ペットボトルナゲンナ!!!」などと我ながら嫌になるくらいカン高い声でどうしようもなく平べったいことをのたまったりしてるから人のことはいえない。だけど、本当は政治的に正しいスタジアムなんて、率直に言ってつまらないと思う。つまらないならまだいいけど、今、博多の森で試合するのがイヤだなあと感じる相手はいないだろう。

あれだけキャラが立ってた福岡は、今では地方のちんまりしたチームになってしまった。何から何まで。

惜しいなあ。なんとかならんもんだろうか。このチームはいつかもっとゴツゴツした穴を掘りかねん、そんな予感すらなくなってしまいつつある。